神社

神社実務研修@神奈川県神社庁 に登壇させて頂きました

令和4年2月7日、神奈川県神社庁において、神職向けの実務研修に登壇させて頂きました。

コロナ禍ではありますが、徹底された感染対策のもと無事に開催の運びとなりましたこと、神社振興委員会の皆様のご尽力に感謝します。
さて、この日の研修は次の2本立てでした。

  1. 「教育勅語を読む ~制定過程と意義を踏まえて~」 (90分)
    國學院大學教授 宮本誉士
  2. 「経営コンサルタントから見た神社運営」 (90分)
    中小企業診断士 石井里幸

神奈川県下の神社の神職様、総勢25名にご出席いただきました。日々の神明奉仕に尽力されお忙しい中、ご出席賜りましたこと大変感謝します。
そして企画・運営にあたられました神奈川県・神社振興委員の皆様に感謝申し上げます。

さて、私の研修のタイトルは「経営コンサルタントから見た神社運営」となっています。
普段、中小企業診断士として中小企業さんを相手に活動している私から見て、神社運営と会社運営には多くの共通点があることを見つけました。
中小企業向けのコンサルティングが神社運営にも使えるのではないか、との切り口での研修を設計したため、このようなタイトルとさせて頂きました。

研修会の様子

研修の目的は「行動変容させること」

前半の宮本教授からは、一昨年に制定130年を経た教育勅語に関する講義が行われました。後半は私から神社運営、そしてホームページ・SNS活用に関する講義となり、一見するとまったく別の内容という印象を受けますが、意外とそうでもなかったと思っています。

といいますのは、私の講義の前半は「上位概念を設定し、目標を決めて行動しましょう」というものだったからです。上位概念とは、会社で言う経営理念のことです。”使命”ともいえるでしょう。神社・神職者としての使命を明確化(文章化)し、それをもとにした行動をしていこう、という内容です。
教育勅語とは、いわば神職者が常に心にとどめておくべき「上位概念」ともいえるもの。教育勅語の講義を踏まえ、どのように自分たちの行動に組み入れていくかを考えてもらうことに繋がります。宮本教授が講義終了後に配布されたアンケート用紙の設問が、
「講義を受けて、ご自身の神明奉仕に、また奉務神社における教化活動にどう反映されたいか。感じたことをご記入ください。」
というものでした。

つまり、教育勅語の講義を踏まえ、実際にあなたはどのような行動をとるのですか?
ということを期待され、講義をされたことがうかがえます。

研修は受けることが目的ではありません。
研修とは「行動変容」を促すために行うものです。研修を受けた結果、参加者の行動が変わらないといけないのです。
そのようなわけで、できるだけすぐに、かつリーズナブルに使えるノウハウを届けることで、神職の皆様の行動を変えたい、という思いで臨みました。

講義内容

前置きが長くなりましたが、私は次のような内容の講義を実施させていただきました。

  1. 経営コンサルタントの視点を参考に、神社運営を見つめなおす
    中小企業経営の考え方やノウハウを知り、神社運営にも適用できないかを検討する
  2. ITツールを活用し、教化につなげる
    ホームページやSNS等を効果的に活用し、時代に合った教化活動を行うための知識を身につける

前半は中小企業経営のノウハウを神社にも適用する、という内容で、具体的には「上位概念」を定めるという内容です。すなわち、神社としての存在意義を明確にし、それを文章化してみませんか、ということです。通常、会社であれば経営理念を掲げます。
その理由は大きく以下の2つがあります。

  1. 組織の方向性を示すため
    組織が進むべき道を示し、組織の構成員に共通意識をもたらす
    軸が定まり、経営判断がブレなくなる
  2. 社会からの信頼を得るため
    何のために存在しているのか(何を行っているのか)をわかりやすく伝える
    事業を通じて社会にどんな価値を広め、貢献しようとしているのかを伝えることで、それに共感する人からの信頼を得ることができる

神社も宗教法人法に基づく”法人”ですので、組織には目的があってしかるべきです。
宗教法人法で定義された宗教法人の目的は次の通り。
「教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成する」
となります。

しかし、法律の文言をそのまま使うのではなく、それぞれの神社には創建にまつわる由緒があるものです。それらや、御祭神や祭礼に関する内容を踏まえたうえで上位概念を定めていただきたいのです。

たとえば、
「当社のご祭神●●のご神徳を広め、氏子崇敬者の反映を祈念する」
という理念(ミッション)を定義したとしましょう。理念は抽象的でOKです。むしろ具体的に定義してしまうと行動が制限されてしまい、運営しにくくなります。

理念(ミッション)が決まると、それをもとに「あるべき姿(ビジョン)」が導かれ、さらに「行動指針(バリュー)」が導かれます。
図にすると次のようになります。


これら3つが定まることで目標を定めやすくなり、具体的にどういった教化活動をしていかなければならないのかが明確になります。講義で使用したスライドでは、神社運営を「航海」に例えました。


前半の講義をまとめるとつぎのようになります。

  1. 御社ならではの「上位概念」を定めましょう
  2. 上位概念に従った「目標」を定めましょう
  3. 目標を達成するための具体的な行動を決めましょう

ホームページ・SNSの活用

後半は、ホームページとSNSの活用の話をさせていただきました。

  1. 自社のHPをより効果的に使うための方法を理解する
    HPをさらに有効活用し、より“見られる”ためのサイト作りをする
  2. 新たに自社HPを作成するための方法を理解する
    自社サイトを作成する手段と相場(費用)を知る
  3. 各種SNSの特徴を理解し、効果的に活用する
    SNSを効果的に使うことでプロモーション効果を高める
    Twitter、Instagram、Facebookなどどれを使うべきか?

神社のホームページに関する悩みでとても多いのが、
「知り合いに作ってもらったので、自分は更新の仕方がわからない」
というものです。

私の本業は中小企業診断士ですが、このパターンは中小企業も同様、とても多いです。ホームページというツールを、あまり重要でない、でも持っていないと時代に乗り遅れる・・・ そんなマインドでホームページを構築しようとすると、

予算をかけたくない!

だれか、安く作ってくれる人いないかな?

業者だと高いので、知り合いにちょっと作れる人がいたのでお願いした!

という感じで、神社に詳しくない人が手掛けた、いかにも愛のないサイトが出来上がります。このパターン、多いですね・・・

次の多いパターンが、HPを自分で作った、というものです。
これからホームページを持ちたいと考えている小規模の神社は、まずは自作してみることをお勧めしました。自作すると自分でホームページの構成が理解できるため、改修や更新作業のスピード感があることが大きな利点です。

すでにホームページをお持ちか尋ねたところ、皆様がお勤めの神社のほとんどがホームページをお持ちでした。すでにお持ちの場合、「アクセス解析をしましょう」という話をしましたが、これは少し難易度が高いと思っています。

しかしホームページ運営において、アクセス解析はかかせません。ブログ記事を投稿したら終わり、ではなくそれがどれくらい読まれているかをチェックすることで、人々の関心がわかるからです。
人々の関心がわかると、それをくみ取った記事が書けますので、結果的にホームページのアクセス数がどんどん増えていく、というわけです。

以上、今回私がお話させていただいた内容は、上位概念を定めること、ホームページやSNSを活用しよう、といった内容に終始し、お金のかかる施策については触れていません。お金をかけずとも、できる教化活動はたくさんあります。

大事なのは「行動すること」

そんな話をさせていただきました。今後とも、神職の皆様の活動をサポートしていきたいと思います。