「神社コンサルタント」として神社支援を志す
幼いころに住んでいた町に約20年ぶりに訪れたときのことです。
当時住んでいた家は取り壊され、大きなマンションが建っていました。
タニシをとった田んぼ、魚釣りをした小川、昆虫を追いまわした森、野球をした広場、、、
それらは全て失われ、20年ぶりにみた風景はすっかり様変わりしていたのです。
もはや記憶の中にしか存在せず、二度と再現できない景色。このとき、まるで自分の故郷が失われてしまったように感じました。
しかし、近所の神社だけが当時の面影を残しており、夏祭り、縁日などの楽しい記憶が想い起こされたのです。
神社が今も変わらず当時の姿を留めていたことに感謝の念と、歴史あるものを受け継いでいくことの大切さを、このとき感じました。
近年では人口減少・高齢化にともない神社を取り巻く環境は大変厳しくなり、氏子や参拝者が減少の一途をたどっているといいます。必然的に神社の収入も減り、神社を維持することや、神職者(神主)自身の生活が困窮しているところもあります。
このような状況にあることを知り、神職者を支援するための活動をしたいと考えるようになりました。より神社支援にコミットするため、神職資格も取得しました。
神職者を支援するためにはどのようなスキルが必要なのか。
神社といっても宗教法人という法人組織である以上、中小企業診断士のスキルをある程度活かすことができるというのが私の考えです。神社の多くは1名~数名程度の小規模運営であり、中小企業との共通点も多いのです。
中小企業診断士は経営戦略、人事、財務、マーケティング、IT、法律など、幅広い知識を持つことを証明する国家資格です。
神社は、氏子や崇敬者といった”顧客”がおり、彼らに対し祈祷や授与品というサービスを提供することでその対価を得る組織であると考えれば、この構図は一般企業と多くの共通点が見つかるものです。(当然、神社はサービス業ではありませんが、視点を変えることでできる支援があるということです)
したがって、中小企業診断士の持つ知識の多くが神社にも適用可能なのです。もちろん、宗教法人法や神社本庁規程の理解など、一般的な中小企業診断士が持ち合わせないであろう知識も必要ですが、それらが無いと相談相手になれないわけではありません。
中小企業と同じように、神社も相談相手を必要としています。
これからの神社、特に過疎地域に鎮座する神社は中小企業と同じように顧客(氏子や崇敬者)を獲得しなければ、存続できないことは明白です。さもなくば、創建から何百年という歴史を持つ神社が永遠に失われてしまうことになります。
神社は、我々の祖先が築き上げた、文化と歴史を今に伝えるタイムカプセルのような施設です。これは企業が廃業するのとはわけが違い、神社が失われるということは、歴史、文化、祖先の想いまで消滅されることを意味するのです。
これからも神社を取り巻く状況は厳しさを増すでしょう。
しかし中小企業診断士をはじめとする専門家が神職者のよき相談相手、そして伴走者となって共に盛り立てていくことができれば、日本人としてこれに勝る喜びはありません。
中小企業診断士・神職
石井里幸